獣医学生の頃に、アメリカで幾つかの分野で専門医という資格を持つ著名な先生達の来日講演を拝聴する機会があり、ユーモアなどを交えながら理論立てた講義や質問への的確な回答をされる姿に感銘を受けて、自分自身の目標となりました。
その目標を叶えるべく、大変お世話になった勤務先を退職して、数多くの方々の助けを受けながら非常に幸運なことにアメリカの専門獣医師教育制度に入れていただくことができました。
楽しく濃厚な時間を経て幸い世界で非常に高い評価を得ているアメリカの専門医達の仲間入りをさせて頂けたものの、自身の未熟さを痛感し、一生勉強、技術研鑽を続けなければいけない仕事だということを改めて感じる毎日です。
金園晨一
どうぶつの総合病院
専門医療&救急センター
病院長
2007年より渡米、アメリカ・カナダ、複数のアメリカ獣医神経科専門医の元で研修
2010年 北米獣医師免許取得
2010-2013年 米国ミズーリ大学附属動物医療センター 神経内科・神経外科レジデント
2013年 米国獣医神経科専門医 取得
2020年 アジア獣医神経科専門医、設立専門医に参画
現在、どうぶつの総合病院 専門医療&救急センターの病院長 兼 神経科主任
現在の仕事についた経緯
仕事へのこだわり
自分の専門分野で困った人や動物のために的確に助けられるようになりたい、という気持ちが始まりでした。
私は、自分の専門分野内でも専門分野以外でも、積極的にアドバイスを求めることを大切にしています。自分一人でできることの小ささを実感し、渡米前に何となく存在していた「資格を有した獣医師は何でも知っていないといけない、できなければいけない」という考え方に対する疑問は確信となり、様々な分野の専門家が集まって仕事をすることの大切さを痛感しました。自分の専門分野内でも全く同じであり、学び前進し続けたいと思っています。
私の専門は脳や脊髄の疾患ですが、どうしても難解な話になりやすいです。そのため、なるべくわかりやすく患者様にお話しすることを心がけています。また、脊髄外科や脳神経外科など手術も多い分野ですが、手術だけではなく、それぞれのご家族と動物達がその病気と向き合うための最善策を相談させて頂くこと、治すことができる病気はしっかり治すことを大切にしています。
自分は、尊敬する恩師や親友と呼べる同僚達に恵まれて育てていただきました。自分の仕事を今は遠くにいる恩師や友人達にいつ見られても恥ずかしく無いようにしたい、という事が私の目標でもあり心の拠り所でもあります。環境が人を作ると信じています。
そう思えるようになった
きっかけ
自分が「身寄りのないガイジン」である状況で周囲から信じられないほど助けて頂き、どうやっても返しきれない恩を受けました。日本も含め、周囲の人々に少しでも還元しなければと感じています。
また、自他共に認めるマイペースな自分でも、これまで学校・職場・地域・国など、日々の環境が自分達に与える影響の強さを感じてきました。環境が人を作るのであれば環境を整えることが大切だと考えるに至りました。
今後の目標
アメリカ・ヨーロッパの獣医専門医制度を模したアジア獣医専門医制度が徐々に設立されてきており、専門医を育てるトレーニング制度が来年始まる予定なので、本当に価値の高い資格に育てあげるまでには10年以上かかると思いますが、私も微力ながらこれをしっかり育てあげることが目標です。
私達の仕事は、医学知識(セオリー)と実際の経験(エクスペリエンス)の2つが大きな柱になりますが、専門医に症例を集約させることで個々の専門医の技量と経験を伸ばし、より良い動物医療を患者様に提供できるようにしたいと思います。
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。