3人兄弟の末っ子として和歌山県の田舎で生まれました。父親が内科・産婦人科、母親が小児科・内科を診療するクリニックを経営しており、分娩もやっていたので昼夜構わず電話が鳴り、両親がクリニックに出向いている背中を見ながら育ちました。
専門医になるより人間の身体を全部見れる医師になる必要があると当時両親から刷り込まれていました。将来の職業選択の自由はなく、第一選択は医師で、第二選択として他の職業を選んだ方が第二選択も上手くいく可能性が上がると言われていました。
さらに車の免許と同じだから医師免許を取るようにと教育されてきました。志望校を選ぶ時も私学の医学部一択でしたが、ハードルが低かったことが幸運でした。現役で入学してしまったので大学時代に中二病のようになり、大学に行かずに車屋と飲み屋でアルバイトし、数年間は時間を損してしまいました。失った時間と金銭的損失は、医師国家試験に合格して勤務するようになってから、日曜日も当直をすることにより取り返せたかなと思っています。
廣井伸行
医療法人社団甲心会
ひろいクリニック
院長
1997年、愛知医科大学医学部卒業後、外科に入局する。7年後内科に転科。
現在の仕事についた経緯
仕事へのこだわり
私は、自分が1番でなくても1番効果のある治療をしている医師を真似ればよいと考えました。「きつい仕事から始めると、他人からはハードそうな仕事でも本人的には余裕が出来ますよ」とメンターに言われ、外科医から始めました。と言っても30年前、外科に入局してもいきなり手術ができるわけもなく、まずは麻酔科の研修をし、全身麻酔を行う全身管理を学んでからでした。
年少時代から父親に、「家の修理に来る職人さんの観察をして真似て自分でもできるようになれ」と言われて育ちました。そのため手技を観察する癖がついてしまい、麻酔ローテーションの時、硬膜外麻酔の上手な先輩の手技を観察し出来るようになりました。麻酔件数も認定医資格を取れる件数まで行いましたが資格は取得していません。
外科医の修行が始まり約7年間在籍しましたが、専門医を目指していなかったので内科に転科し、癌の早期発見を行いました。高齢者の癌は早期ではなく進行癌であることが多く、手術後も残存癌が残る可能性が高いため、予後は良くありません。治療効果のない抗がん剤を投与すると体力が落ちて肺炎で亡くなる方が多かったので、他の治療法がないかと調べていたところ自費治療のNK細胞免疫治療に出会い勤務することになりました。そして1年間に150人の治療に関わることが出来ました。
しかし治療成績は均一ではなく、何かが治療成績に影響していると考えました。そして出た答えは、食事が影響しているということでした。高額な自費治療費を出せる方々は、炭水化物が主食と考えていますが、英語で主食(メインディッシュ)は、肉や魚料理を表します。副食は米飯、麺類のことですが、日本では米や小麦を主食と考えている方が多く、患者様に糖質制限を理解していただくのに苦労しました。当然30年前はクリニックのスタッフさんにも理解できず、患者様から質問があり困っていました。
そう思えるようになった
きっかけ
しかし雇われている間は、食事療法を勧めることが経営方針と違い指導しないようにと指示が出ました。私はどのがん治療にも糖質制限(食事療法)が必要と考えていたので個人のクリニックを開業しました。
クリニックでは自分がもしも癌になったらやりたい癌治療を集めました。その内容が高濃度ビタミンC点滴、コロイドヨード点滴、低容量オプジーボヤーボイ点滴、NKエクソソーム点滴、自家がんワクチンなど副作用が少ないと思われる治療です。患者様に選んでいただき栄養療法も介入して、内服、点滴で足りない栄養を補います。また糖質制限も、頑張らずともある程度食べても大丈夫なサポートができる薬を処方することで、(患者様の癌の進行度にもよりますが)寛解までいかなくても癌の進行を遅らせることが出来ます。苦しむ治療ではなく副作用の少ない生活の質を落とさない治療を選んでいただくことをお勧めしています。
今後の目標
脂肪由来の幹細胞を点滴することにより傷んだ臓器細胞の再生を図ります。実際、インシュリンが必要な糖尿病患者様が内服薬でコントロール出来る状態まで改善した症例もあるように、脳卒中後再生および二次損傷予防、肝臓再生、皮膚再生、頭皮の発毛促進、膝関節再生など健康な100歳を目指す未来再生医療を進めていきたいと考えています。
頭皮、肌治療に用いるエクソソームも同時に作成でき、炎症反応も抑える自家IPS細胞は、これからの人生で若返り長寿のカギになるのは間違いないと考えています。
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。