Profile

井尻学見

ホームケアクリニック麻生
院長

旭川医科大学医学部卒業。旭川医科大学勤務。カリフォルニア大学勤務。
2023年2月よりホームケアクリニック麻生の院長となり現在に至る。

現在の仕事についた経緯

私は、患者さんに対して医師としてどんなことができるかを常に考えてきました。
コロナ禍において、多くの患者さんが家族と最後の時間を過ごせずに亡くなる状況を目の当たりにし、患者さんが自宅で安心して過ごせる環境を提供することの重要性を強く感じました。
その中で、在宅医療の分野で働くことを決意し、現在のクリニックを立ち上げました。地域の患者さん一人一人に寄り添い、住み慣れた自宅での生活を支えるために日々尽力しています。

仕事へのこだわり

新人時代から、私は常に患者さんの視点に立つことを心がけてきました。根底にあるのは、患者さんが「その人らしい選択をできること」です。特に、「医療は人生の選択肢の一つでもある」と考えており、もし患者さんが「自宅で生活したい」という選択をした場合には、それを尊重し、希望を叶えるために全力を尽くすことを信念としています。
在宅医療では、患者さん一人一人のニーズに合わせたケアが求められます。例えば、在宅酸素療法が必要な患者さんには24時間のサポートを提供し、緊急時には迅速に対応できる体制を整えています。
中には、点滴を全くしたくないという方もいれば、なるべく薬を使って苦痛を取り除いてほしいという方もいます。医療に関する希望は様々です。そのため、患者さんやそのご家族とのコミュニケーションを大切にし、その患者さんが思い描く“自宅で過ごせる医療”を提供するため、信頼関係を築くことを重視しています。
さらに、新人時代から現在まで、常に自己研鑽を怠らず、最新の医療技術や知識を習得する努力を続けています。医療は日々進化しており、新しい治療法や機器の導入が不可欠です。そのため、定期的に勉強会やセミナーに参加し、チーム全体のスキルアップを図っています。
私の目標は、患者さんが住み慣れた自宅で安心して生活できる環境を提供するために、今までは病院の中でしかできなかったことを在宅の場まで広げることです。そのためには、医療機器はもちろん、薬剤師、看護師、理学療法士、介護士、歯科医師、歯科衛生士、栄養士、臨床工学技士、臨床検査技師など様々な職種と連携し、幅広い医療を提供できるチームを作っていくことが大事です。医療提供者は専門知識だけでなく、患者さんやご家族との信頼関係を築くコミュニケーション能力も重要です。これらのスキルを磨き続けることで、より良い在宅医療を提供し、患者さんの生活の質を向上させることを目指しています。

そう思えるようになった
きっかけ

地域の基幹病院などでがんの診療をしていた時に、末期がんの診断を受け、余命が限られている中で「自宅で最期を迎えたい」と希望される方がいました。入院することで体調はよくなりますが、余命を伸ばすことはできません。入院の期間はその方にとっては、貴重な余命を浪費してしまう時間になってしまうとのことでした。
その時、私は医療の専門知識を駆使し、患者さんの希望を叶えるために全力を尽くしました。患者さんの自宅療養を支えるために、看護師とも協力し患者さんとご家族が安心して過ごせる環境を整えました。患者さんは、元学校の先生で、自宅にいる期間に教え子と会ったり、旅行をしたり、旧知の友と会ったりと、とても充実した生活を送っておられました。
その経験を通じて、患者さん一人一人の希望を尊重し、その実現のために医療提供者として何ができるかを考えることの重要性を強く感じました。また、患者さんの最期の時間を支えることの重責と、それに伴うやりがいを実感しました。そしてこれが私の仕事へのこだわりとスタイルを形成するきっかけとなりました。

今後の目標

今後の目標は、医療業界と他業界を結びつけ、新たな在宅でのサービスや幅広い見識を持った人材を育成・輩出することです。特に、在宅医療の分野においては、日本の素晴らしい在宅医療のノウハウを海外にも伝え、少子高齢化を迎える国々での在宅医療の発展に貢献したいと考えています。
また、現在のチームと共に、より豊かな地域社会を実現するための取り組みを続けていきたいと思います。患者さん一人一人のニーズに応じたケアを提供し、住み慣れた自宅で安心して過ごせる環境を整えることで、患者さんの生活の質を向上させることを目指します。

※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。

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